一年ぶりにたずねた君の家は、庭にあるナンテンの木が雪をかぶっていて、本格的な冬の到来を告げていた。
ご家族皆さんお変わりなく、お母さんが抹茶をたててくれたよ。
「作法とか全然気にしなくていいんですよ」
笑顔で話しかけるお母さんになお戸惑いつつ、取り合えず「結構なお手前で・・」などどつぶやいてみた。
近くにある墓地にお墓参りをして、帰りの電車の時間までしばらくお話した。
「本当にあっという間でした。もう一年だなんて。あっという間すぎて、まだあの子が亡くなったという実感が湧かないんです」
確かにそのとおりだ。
ご家族と僕は、一年前の続きのように同じ場所、同じ位置に座って話している。
ユリの花に囲まれた君の遺影を見ながら、お母さんは話し続けた。
「こうやってまた遠い所からたずねていらして、あの子もきっと喜んでいると思いますよ。もちろん私たちもまたあの子の話ができて嬉しいです」
そう言っていただけると、押しかけた僕も救われる。
「人って二度死ぬんだって」
いつかある人がそんなことを言っていた。
「一度目は亡くなった時。もう一回は、その人を思い出す人がいなくなった時なんだって」
そっか。
それなら君が死んだって実感が湧かないのもつじつまが合うかな。
夜、人の流れに合わせて街を歩いていると、鮮やかなイルミネーションの並木道に出くわした。
あー、これが光のページェント。。
ページェントって、本来は、イエスキリストの誕生の様子を、劇や仮装行列などをとおして表現するイベントのことなんだとか。
そう言えば、君ん家はキリスト教だったね。
30年以上も続いている光のイベント。
君もどこかで感じているといいな。
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